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​本会について

本会について

近年、世界的な人口増加と新興国の経済発展により、食料消費量が急増しています。一例として、食肉の需要は大きく高まると予想されており、国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2050年に世界の食肉の年間消費量は約4億7000万トンに達し、現在より2億トン以上増加すると試算されています。しかしながら、畜産動物を飼養する従来の食肉生産は環境負荷や資源の制約、安全性の課題があり、その持続性に限界があると指摘されています。

​実際、畜産動物の飼養による食肉生産は、温室効果ガスの排出や土地・水・農作物資源の利用による、地球温暖化、土壌劣化、および水質・大気汚染といった地球環境問題の主要因のひとつと考えられています。加えて、口蹄疫や牛海綿状脳症(BSE)などの家畜伝染病による食肉流通へのリスクもあり、将来的な食料供給の安定性に大きな不安を与えています。

このような背景から、世界的に健康志向やフードロス問題、サステナビリティへの関心が高まり、持続可能な食のあり方を模索する「サステナブル・フード・ムーブメント」が広がりを見せています。その中で、2000年代以降に再生医療分野で発展した細胞培養・組織工学(ティシュエンジニアリング)の技術を応用し、動物や植物を飼育せずに細胞を培養・増殖させて食料を生産する「培養食料」の研究が世界各国で進展しています。

特に、筋肉細胞の効率的な増殖や、肉繊維を模した組織構築など、従来の食肉に近い品質の再現を目指した技術開発が進んでおり、穀物や畜産動物に依存しない革新的な食料生産システムの確立に向けた動きが加速しています。この技術は、環境負荷の軽減、食料不足やタンパク質危機の克服、食肉の安定供給への貢献、さらには健康的な新しい食文化の形成にもつながると期待されています。

しかし、実用化には依然として多くの課題があります。栄養価、味、価格、そして何より安全性を確保したうえで社会に受け入れられる製品を開発するには、さらなる技術革新と科学的評価基準の整備が必要です。

こうした課題解決と技術革新を目的に、2025年4月、私たちは「日本培養食料学会」を設立しました。

本会は、培養食料に関心を持ち、実際に研究・開発に携わる多様な分野の研究者が集い、技術の進歩と知見の共有を通じて、安全・安心かつ美味しい培養食料の早期社会実装を目指します。また、研究成果を科学的に体系化し、栄養面・安全性の観点から信頼性のある情報を発信することで、産官学の連携による新たな食品産業の創出と、将来の食料問題解決、持続可能な社会の実現に貢献することを目標としています。

代表理事 挨拶

 
代表理事挨拶

本学会は、2019年6月に発足した「培養食料研究会」を母体として設立されました。同研究会は、食の未来を見据えた先駆的な議論と研究交流の場として活動を重ねてまいりましたが、時代の要請とともにその規模と重要性が増し、より広範で本格的な学術的・社会的貢献を目指すべく、2025年4月に学会として新たなスタートを切りました。

 

近年、世界的な食料危機、SDGsの達成に向けた持続可能な食料システムの構築、そして食料安全保障の強化が、喫緊の課題として浮上しています。こうした背景のもと、穀物や家畜の個体生産に依存せずに細胞から食品を生産する「培養食料」は、革新的かつ持続可能な解決策の一つとして期待されています。

 

本学会が基盤とする培養食料の研究開発には、日本が世界に誇る再生医療分野の培養技術や組織工学(ティッシュエンジニアリング)が応用されており、バイオテクノロジーと食科学の架け橋としても注目されています。

 

私たちは、異分野の知を融合し、産官学の共創を通じて技術革新を加速させると同時に、早期の実用化に向けたルール形成や社会受容性の向上にも取り組んでまいります。さらに、将来の培養食料分野を担う学際的な人材を育てることも、私たちの重要な使命の一つです。

 

本学会は、研究者、技術者、関連省庁、企業、市民など、さまざまな立場の方々と手を携えながら、持続可能で安心・安全な「新しい食のかたち」を共創により築いていきたいと考えています。

 

今後とも、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 

理事・監事一覧

 
理事一覧
清水達也
東京女子医科大学 先端生命医科学研究所
松﨑典弥
大阪大学 大学院工学研究科
坂口勝久
東京都市大学 理工学部 医用工学科
髙橋宏信
東京女子医科大学 先端生命医科学研究所
竹内昌治
東京大学 大学院情報理工学系研究科
五十嵐圭介 
東北大学 大学院農学研究科
井形彬
東京大学 先端科学技術研究センター
日比野愛子 
弘前大学 人文社会科学部
池田大介
北里大学 海洋生命科学部
紀ノ岡正博
大阪大学 大学院工学研究科
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